5種混合ワクチンで予防できる病気、特に乳児の百日咳について
5種混合ワクチンのすすめ
― 百日咳などの感染症から赤ちゃんを守るために ―
5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)とは?
5種混合ワクチンは、「DPT-IPV-Hib」とも表記され、それぞれの頭文字が次の5つの感染症を示しています:
- D:ジフテリア(Diphtheria)
- P:百日咳(Pertussis)
- T:破傷風(Tetanus)
- IPV:ポリオ(Inactivated Poliovirus Vaccine)
- Hib:インフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b)
このワクチンは、赤ちゃんの健康を守るために非常に重要な定期予防接種のひとつで、1本の接種で5つの重い感染症を同時に予防できるという大きな利点があります。
現在の日本では、ジフテリア・破傷風・ポリオ・Hibはいずれもワクチンによって発症が非常にまれになっていますが、百日咳だけは現在も流行が続いており、特に注意が必要です。
このページでは、5種混合ワクチンで予防できる病気の中でも、いまも患者数が多い「百日咳」について詳しく解説します。
乳児の百日咳は診断が難しく、入院を要することが多いため予防が非常に重要です
百日咳は、生後2か月未満などワクチン未接種の乳児にとって特に危険な感染症です。風邪のような軽い症状から始まることが多く、特徴的な咳が見られないこともあり、診断が遅れやすいのが特徴です。
乳児では以下のような重い症状を呈することがあり、実際に感染した乳児の多くが入院治療を必要とします:
- ・呼吸が止まる(無呼吸発作)
- ・顔色が紫になる(チアノーゼ)
- ・けいれん、低酸素、肺炎、脳症などの合併症
米国CDCによると、生後6か月未満で百日咳にかかった乳児のうち、約50%が入院し、0.6%が死亡に至ると報告されています。
出典:CDC, Pertussis Surveillance Report, 2023
百日咳について:学童や成人から家庭内でうつされるケースが多く見られます
百日咳は、年齢を問わず発症する感染症ですが、特にワクチンの効果が薄れてくる学童期や成人に多く見られます。
2023年の国立感染症研究所の報告によると、全国の百日咳患者のうち、5〜14歳の小中学生が約40%、次いで20〜30代の成人でも感染が確認されています。
このような年代では、症状がかぜに似て軽く済むことが多いため、診断が遅れたり、気づかないうちに周囲へ感染を広げてしまうことがあります。
乳児の百日咳は、家庭内からうつるケースがほとんどです。
- 兄姉からの感染:約35%
- 母親からの感染:15%
- 父親からの感染:10%
このように、感染源の大半が家族内にあることが明らかになっています。
出典:厚生労働省「百日咳の診断と予防に関する資料」(2023年)
予防の要:できるだけ早く、2か月からのワクチン接種を
百日咳は一度感染してしまうと、特に乳児では治療が難しく、長期の入院や合併症のリスクを伴います。そのため、最も効果的な対策は予防接種です。
- 生後2か月を迎えたら、速やかに5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)を開始しましょう。
- あわせて、学童期や成人への追加接種の必要性も世界的に検討されています。
百日咳を「防げる病気」として社会全体で意識し、特に乳児を守るために家族全体で予防意識を高めることが大切です。