肺炎球菌感染症について:ワクチンで防げる病気
小児の肺炎球菌感染症について
~中耳炎から命に関わる感染症まで ワクチンの力で守りましょう~
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、乳幼児がかかりやすい代表的な細菌感染症の原因菌です。鼻やのどにいることもありますが、体力や免疫が弱いと重症化することがあります。
主な肺炎球菌感染症
- 中耳炎:中耳炎の約30~40%が肺炎球菌[1]。抗菌薬が効きにくい場合もあります。
- 肺炎:乳幼児の細菌性肺炎の原因に。重症化しやすく入院が必要なこともあります。
- 副鼻腔炎:風邪に続いて起こることが多く、長引く鼻症状の原因になります。
- 侵襲性肺炎球菌感染症(IPD):菌血症や髄膜炎など。
特に髄膜炎では5〜10%が死亡し、約20〜30%に後遺症(けいれん、難聴など)が残るとされています[2]。
ワクチンでここまで減りました
2013年に13価ワクチン(プレベナー13)が定期接種となり、小児の重症肺炎球菌感染症(IPD)は80%以上減少[3]しました。
さらに、肺炎球菌ワクチンは命に関わる病気だけでなく、中耳炎や肺炎などの「よくある感染症」にも効果があります。
- 急性中耳炎:肺炎球菌が原因の中耳炎が約60%以上減少[4]。抗菌薬使用も減り、繰り返す中耳炎のリスクも軽減。
- 小児肺炎:乳幼児の肺炎による入院が約30〜40%減少[3]。特に重症肺炎に対する効果が明らかです。
- 副鼻腔炎:肺炎球菌の保菌が減ることで、二次感染としての副鼻腔炎も減る傾向が見られます。
進化するワクチン:より広く、より強く
現在では、より多くの型に対応したワクチンが登場し、予防できる範囲が広がっています。
ワクチン名 | 含まれる莢膜型数 | 主な追加型 | カバー率 (日本小児IPD) |
---|---|---|---|
プレベナー13(PCV13) | 13型 | – | 約70〜80% |
バクニュバンス15(PCV15) | 15型 | 22F・33F | 約85% |
プレベナー20(PCV20) | 20型 | 8・10A・11A・12F・15Bなど | 約90%以上 |
大切なお子さまを守るために
肺炎球菌感染症は「よくある病気」から「命にかかわる病気」まで幅広く、その多くがワクチンで防げます。
2024年10月からは最新の20価ワクチン(プレベナー20)が定期接種として受けられるようになりました[5]。
生後2ヶ月から肺炎球菌ワクチンが接種可能です。スケジュールに沿った予防接種をおすすめします。
脚注・出典
- [1]国立感染症研究所「肺炎球菌感染症とは」
- [2]厚生労働省「定期接種ワクチン解説資料」(2024年版)
- [3]日本小児科学会「小児の肺炎球菌感染症とワクチンの現状」
- [4] Casey JR, et al. Pediatrics. 2007;120(3):594–601(中耳炎に対するPCVの効果)
- [5]ファイザー株式会社「プレベナー20 添付文書」(2024年10月改訂)