食物アレルギーと皮膚症状について
食物アレルギーと皮膚の症状について
~お子さんの皮膚の状態が気になり、アレルギーを心配されている方へ~
■ 皮膚の荒れ=アレルギーとは限りません
赤ちゃんの肌に湿疹やかさつきが見られると、「何かのアレルギーでは?」と不安になる方も多いかもしれません。
でも実は、食べ物が直接の原因で皮膚が荒れることはそれほど多くありません。
食後30分以内にあらわれる「じんましん」や「顔の腫れ」などはアレルギーによる症状の可能性がありますが、
慢性的な湿疹やかさつきの多くは乾燥やスキンケア不足によるものです。
(参考:日本皮膚科学会『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2023』、NIAIDガイドライン, 2010)
■ 除去食は自己判断で始めないようにしましょう
「湿疹が出たから〇〇はやめようかな…」と、自己判断で食べ物を除去するのは避けてください。
必要以上の除去は、かえって食物アレルギーの発症リスクを高める可能性があることが分かってきています。
また、再開するタイミングも難しくなってしまいます。
(参考:LEAP Study, N Engl J Med, 2015/日本小児アレルギー学会『ガイドライン2021』)
■ 離乳食は皮膚を整えてから
お子さんの離乳食を始めるにあたって、まず大切なのは、肌の状態を整えることです。
皮膚が荒れている状態では、肌のバリア機能が低下しており、皮膚から食べ物の成分(アレルゲン)が体に入り込み、アレルギーを引き起こすきっかけになることがあります。
このような「経皮感作」というメカニズムは、最近の研究でも注目されており、アトピー性皮膚炎など皮膚トラブルのある赤ちゃんでは、皮膚を通じて卵やピーナッツなどのアレルギーを獲得してしまう可能性が指摘されています(LEAP Study, 2015/Brough HA et al., 2015)。
そのため、離乳食をスタートする前に、スキンケアをしっかりと行い、乾燥や炎症を抑えることがとても大切です。
■ 食べ始めは遅らせず、でも慎重に
皮膚の状態が整ったら、卵・乳製品・小麦などのアレルギーを起こしやすい食品も、生後5~6か月ごろから適切に食べ始めることが大切です。
以前は「卵は1歳まで避ける」といった考えもありましたが、近年の研究では、早期に少量から食べ始めたほうがアレルギーの予防につながることがわかっています(LEAP Study, 2015/厚生労働省『授乳・離乳の支援ガイド(2019年)』)。
新しい食材を始めるときのポイント
- 1日1種類ずつ試す
- 特に卵はしっかり加熱して与える
- 単品で与える
- 少量から始める
- 平日の午前中に試すと安心
注意が必要なのは、加熱が不十分な「溶き卵」や自家製のフレンチトーストなどです。こうした料理では卵白が生のまま残っていることがあり、アレルギー症状を引き起こす可能性があります。
卵を与える際は、まずは固ゆで卵の黄身のみから始め、次に白身へと進めましょう。
2歳ごろまでは半熟卵や加熱の不十分な卵は避けて、安全な方法で食べ慣らしていくことが推奨されています。
■ まずはスキンケアが基本
アレルギーを心配する前に、まずはスキンケアで肌を整えることが何よりも大切です。
徹底したスキンケアでも改善が見られない場合に、食事との関連を考えるようにしましょう。
また、血液検査(IgE抗体検査)が陽性であっても、必ずしも症状が出るとは限りません。
検査結果だけに頼って除去を進めてしまうと、不安や誤解が大きくなりやすく、無用な除去に繋がります。
(参考:日本小児アレルギー学会『食物アレルギー診療ガイドライン2021』)
食べたあと30分〜2時間以内に
・顔や目の腫れ
・全身のじんましん、かゆみ
・咳、声がれ、ぜーぜーなどの呼吸の異常
・嘔吐や腹痛でぐったりしている様子
などが見られた場合は、食物アレルギー(アナフィラキシー)の可能性があります。
これは皮膚のかさつきとは異なる緊急性のある症状ですので、すぐに医療機関を受診してください。
除去すべきかどうかも含め、医師と相談して判断しましょう。
■ 参考文献
- 日本小児アレルギー学会『食物アレルギー診療ガイドライン2021』
- 日本皮膚科学会『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2023』
- 厚生労働省『授乳・離乳の支援ガイド(2019年)』
- Du Toit G, et al. LEAP Study, N Engl J Med, 2015
- NIAID Guidelines for the Diagnosis and Management of Food Allergy, 2010