アトピー性皮膚炎やどひひの時、薬剤の効果を高める重層療法をしてみましょう
外用薬の効果を高める「重層療法(ちょうそうりょうほう)」について
アトピー性皮膚炎や「とびひ(伝染性膿痂疹)」などで、じゅくじゅくした湿疹やなかなか治らない手指の湿疹がある場合に、外用薬の効果を高め、皮膚を保護するための方法として「重層療法」があります。
● 重層療法とは?
まず、医師から処方されたステロイドや抗菌薬などの外用薬を皮膚に塗り、その上から亜鉛華(あえんか)単軟膏を重ねて塗ります。さらに、リント布やガーゼで覆い、テープや包帯でやさしく固定します。
- ・外用薬がしっかりと皮膚にとどまりやすくなる
- ・皮膚が保湿され、かさぶたにならずに治りやすくなる
- ・かき壊しや外的刺激から皮膚を守ることができる
● ご家庭での準備
- ・外用薬(ステロイドや抗菌薬など)※病院で処方されたものを使用してください
- ・亜鉛華単軟膏(処方または市販品)
- ・へら(アイスのスプーンなどでも代用可)
- ・リント布またはガーゼ
- ・はさみ
- ・テープや包帯(ズレを防ぐため)
● 「リント布」とは?
リント布はガーゼよりも厚みがあり、薬が外に染みにくいため、密閉効果が高く、重層療法に適しています。ただし、ガーゼでも代用可能です。
● やり方(リント布の場合)
- 1. リント布を患部の大きさに合わせて切る
- 2. 毛羽立った面に、へらで亜鉛華単軟膏を塗る

▲ パンにバターを塗るように、リント布に亜鉛華軟膏を広げて塗ります
- 3. 患部を石けんとぬるま湯でやさしく洗う
- 4. 外用薬を塗る
- 5. リント布を薬の上から貼る
- 6. テープや包帯でやさしく固定する

▲ 最後に包帯などでずれないように固定します
● やり方(ガーゼの場合)
- 1. 患部を清潔にする
- 2. 外用薬を塗る
- 3. その上から亜鉛華単軟膏を厚めに塗る

▲ 外用薬を塗った後、皮膚に直接亜鉛華単軟膏を重ね塗りします
- 4. ガーゼをかぶせて固定する
- 5. ガーゼを交換する時、亜鉛華単軟膏が取れにくい場合は、ベビーオイルでやさしく拭き取ってから石けんで洗うとスムーズです
● 注意点
- ・処置は入浴後や清潔にした後に行うのがおすすめです
- ・かぶれや悪化が見られた場合は中止し、受診してください
- ・医師の指示のもとで行い、長期間の使用は避けましょう
● 医学的な根拠について
「重層療法」は医学的に正式な用語ではありませんが、皮膚科や小児科では次の目的で実際に用いられています。
- ・密閉療法(オクルーシブ療法)として、外用薬の効果を高める
- ・亜鉛華軟膏の収れん・抗炎症・保護効果を活かして皮膚の回復を助ける
出典:『今日の治療指針 2024』(南江堂)/『あたらしい皮膚科学 第4版』(中山書店)/東京都立小児総合医療センター資料/Visual Dermatology(羊土社)