こどものヒトメタニューモウイルス感染症について
こどものヒトメタニューモウイルス感染症について
ウイルスについて
ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus, hMPV)は、2001年に発見された比較的新しいウイルスで、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層に感染します。
ヒトメタニューモウイルス(hMPV) は、RSウイルスに次いで、乳幼児に多い呼吸器感染症の原因ウイルスです。
アメリカの外来クリニックでの調査では、健康な5歳未満の子どもがかかる急性呼吸器感染症の中で、hMPVは第2位の原因ウイルスとして報告されています
ヒトメタニューモウイルスに比較的特徴的な症状
- 発熱の持続がやや長い
▪️平均4.3日程度とされ、他の呼吸器ウイルス感染症(平均3.1日)よりも少し長引く傾向があります。 - 喘鳴(ぜいぜい)や呼吸困難が出やすい
▪️特に乳児や喘息のあるお子さんでは重症化することがあります。 - 咳が比較的強く、長引く
▪️初期は乾いた咳、しだいに痰を伴う咳へと変化し、夜間の咳き込みが続くこともあります。
検査について
▶︎ 日常的にはヒトメタニューモウイルスの検査は行わず、必要な場合に限って実施されます
hMPVの診断には、鼻の奥のぬぐい液を使った抗原検査があり、約10分ほどで結果が出ます。治療が対症療法に限られること、似た症状のウイルスが多いこと、検査時に痛みが伴うことなどから、検査は限定的に行われます。
治療と抗生剤について
hMPVに特効薬はなく、気管支炎に準じた対症療法が中心です:
- ⚫︎ 解熱剤(アセトアミノフェンなど)
- ⚫︎ 去痰薬(痰を出しやすくする薬)
- ⚫︎ 気管支拡張薬(呼吸を楽にする薬)
- ⚫︎ 水分補給、安静
抗生剤はウイルスには効果がないため基本的に使いませんが、
▶︎ 発熱が4日以上続く場合や、いったん下がった熱が再び上がる(再燃)場合には、血液検査などを行い、細菌感染が疑われた場合に抗生剤を使用することもあります。
自宅でのケア
- ▶︎ こまめな水分補給(湯冷まし、麦茶、経口補水液など)
- ▶︎ 無理に食べさせず、消化のよいものを少しずつ
- ▶︎ 咳が強いときは加湿、頭を少し高くして寝かせる
- ▶︎ 衣服の調整や冷却で熱のつらさをやわらげる
注意すべき観察ポイント(再度受診の目安)
- ▪️ 発熱が4日以上続いている
- ▪️ 呼吸が速く苦しそう、胸がへこむ(陥没呼吸)
- ▪️ 顔色が悪い、唇が紫がかっている(チアノーゼ)
- ▪️ 水分がとれず、尿が出ていない
- ▪️ ぐったりして反応が鈍い
登園・登校の目安
ヒトメタニューモウイルス感染症は、学校保健安全法に基づく出席停止の対象ではありません。
そのため登園・登校は、以下の一般的な体調回復の目安に沿って判断されます:
- ▶︎ 発熱がなくなって1日以上経っている
- ▶︎ 咳や鼻水が軽くなり、元気や食欲が戻っている
- ▶︎ 集団生活に支障がないと保護者が判断できる状態
再感染について
hMPVは一度感染しても免疫が長くは続かないため、再感染することがあります。
特に2歳未満の初感染では重症化しやすく、その後も学童期や成人でも軽い咳や発熱を伴って再感染することがあります。